自己破産を予定しているときに、家族や友人・知人など特定の債権者にだけ返済を行うことは、偏頗弁済(へんぱべんさい)という法律上問題のある行為です。
破産管財人による調査等の対象となる可能性がありますし、免責不許可事由に該当するものとして免責(借金の免除)を受けられなくなるおそれがあります。
ですので、迷惑を掛けたくないからといって、家族や友人・知人にだけ返済をしてはいけません。
自己破産では、すべての債権者が平等に取り扱われ、特定の債権者だけを手続から除外するとか、特定の債権者にだけ返済を行うことは、許されていません。
そのため、自己破産を予定しているにもかかわらず、家族や友人・知人など特定の債権者にだけ返済を行うことは、偏頗弁済として禁止されています。
もしこのような偏頗弁済が行われた場合には、裁判所が破産管財人を選任し、偏頗弁済が行われた経緯や金額などについて、調査が行われることとなるのが通常です。
本来ならば同時廃止事件となっていたはずが、偏頗弁済を行ったがために管財事件となれば、破産管財人の報酬等にあてるための予納金を裁判所に納めなければならなくなり、費用の負担が増えてしまいます。
また、偏頗弁済が行われた時期および偏頗弁済を受けた家族や友人・知人の認識いかんにより、破産管財人によって返済の効力が否認され(否認権の行使)、当該家族や友人・知人に対して返還の請求が行われることがあります(そして、破産管財人が当該家族や友人・知人から取り戻した金銭は、破産管財人の報酬や債権者への配当にあてられます)。
そうなれば、自己破産の手続の進行を長期化・複雑化させてしまいます。
さらに、特定の債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、返済期限未到来などすぐに返す必要がないにもかかわらず偏頗弁済が行われた場合には、免責不許可事由に該当することとなります。
免責不許可事由とは、破産法において、一定の事情に該当する場合には、裁判所は免責(借金の免除)を許可しないことがある、と定められたものです。
このように免責不許可事由に該当し、その内容・動機・経緯などが悪質・重大であると判断されれば、免責(借金の免除)を受けられなくなってしまう可能性があります。
以上のように、自己破産を予定しているにもかかわらず、家族や友人・知人など特定の債権者にだけ返済を行うことは、とてもリスクが高い行為となりますので、やるべきではありません。