このような名義変更は、破産法における詐欺破産罪という犯罪に該当するおそれがあります。
また、このような名義変更をしても、破産管財人によって名義変更の効力が否認され、結局は売却・処分されてしまうこととなります。
さらに、このような名義変更は、免責不許可事由に当たるものとして、免責(借金の免除)を受けられなくなるおそれがあります。
以上から、大変問題のある行為であり、このような名義変更をするべきではありません。
自己破産とは、一定の生活用品・金銭を除く財産を失う代わりに、すべての借金の免除を受けることができる手続です。
そして、手元に残すことができる一定の生活用品・金銭を除く財産は、破産管財人によって売却・処分され、破産手続の費用や債権者(金融機関・貸金業者など)にあてられるというのが基本です。
預貯金・不動産・自動車などの財産を取られないように、家族(家族以外の友人・知人などであったとしても同様です)に名義変更するという行為は、このような自己破産の手続を妨害する財産隠しと評価されることとなります。
このような名義変更は、自己破産の手続の複雑化・長期化をきたすものであり、破産者・家族にも重大なデメリットをもたらすおそれのある行為です。
まず、このような名義変更は、破産法における破産詐欺罪という犯罪に該当するおそれがあります。
破産法では、破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で財産を隠匿するなどした場合には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するものと定められています。
破産詐欺罪に関与した家族も、共犯に問われるおそれがあります。
また、このような名義変更が行われた場合、破産管財人は名義変更の効力を否認することができます。
このように破産管財人が不当な名義変更の効力を否定する権限のことを否認権と言いますが、否認権を行使されるとその財産が破産管財人のもとに取り戻され、結局は売却・処分されてしまうこととなります。
ですので、このような名義変更により手元に多くの財産を残そうとしても、無駄に終わることとなります。
さらに、このような名義変更は、財産の隠匿に当たるものとして、免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由とは、破産法上、一定の事情に該当する場合には、免責(借金の免除)を許可しないことがある、と定められたものです。
免責不許可事由に該当する場合には、免責(借金の免除)を受けられなくなる可能性があるのです。
自己破産をする目的は、借金を免除してもらうためです。
それなのに、免責(借金の免除)を受けられなくなってしまうのでは、まったく意味がありません。
自己破産をしたにもかかわらず、多額の借金を背負い続けなければならないというのは、大変なリスクであると言えるでしょう。
以上から、預貯金・不動産・自動車などの財産を取られないように、家族に名義変更しようと考えても、破産管財人の否認権行使によって結局は計画が無駄に終わることですし、破産詐欺罪に問われたり、免責(借金の免除)を受けられなくなったりする可能性がありますので、非常にリスクの高い行為であると言えます。
このような名義変更は、大変問題のある行為ですから、絶対にやるべきではありません。