手続:自己破産
性別:男性
年代:30代
借金額:3000万円
1 依頼者の状況
依頼者は、複数の消費者金融及び個人から多額の借金があり、その総額は約3000万円に及ぶものでした。
その借金の一部は依頼者のFXを原因とするものでしたが、依頼者は「新しい家族ができたことから、人生を再出発させたい」とのことで、借金の整理についてご相談にいらっしゃいました。
2 当事務所の対応と結果
当事務所の弁護士は、依頼者と面談の上、借金の原因がFXであるものの、現在は収入の範囲内で生活しており、FXを安易に利用したことについて十分に反省されていること、さらに依頼者の年齢や家族構成等といった事情を聴取しました。
そして、このような事情から、依頼者には免責不許可事由(浪費)が認められるものの、経済的更生の余地があり、自己破産による免責決定を得ることが可能であると判断しました。
この点、依頼者には明らかに浪費という免責不許可事由が認められることから、民事再生(個人再生)によって借金の整理を行うことも考えられました。
しかし、個人再生では債務が圧縮されるとはいえ一部は残存すること、総債務額が多額であることから個人再生によって支払いを継続できるかどうか将来的に疑問があることから、自己破産が最善であると判断しました。
そこで、当事務所の弁護士は、自己破産の手続きのご依頼をお受けし、申立てに向けて準備を進めていきました。
そして、裁判所に自己破産の申立てを行ったところ、裁判所より「FXの利用状況について詳細が判然としないため、このままでは管財人報酬が20万円になる簡易管財事件によって進めることができず、より高い管財人報酬を予納する必要がある」と示唆されました。
※簡易管財事件とは、管財事件のうち、管財人報酬にあてるための予納金が最低額の20万円となる事件のことを言います。
裁判所からのこのような示唆に対し、当事務所の弁護士は、管財人報酬が高額になることは依頼者の利益に反するため、簡易管財手続きで進められるように最善を尽くしました。
具体的には、FXの取引履歴を改めて依頼者に取得してもらい、その他FX取引口座の解約をした事実が分かる資料、反省文、申立後の家計簿といった追加書類を複数裁判所に提出いたしました。
これにより、裁判所は簡易管財手続きによって進めることができると判断し、20万円の低額な管財人報酬によって破産手続きを進めていくことが可能となりました。
その後の手続きにおいては、依頼者及び当事務所の弁護士において、管財人との面談に積極的に協力し、家計簿をさらに追加で提出する等し、手続きに協力的な姿勢を示していきました。
また、依頼者がわずかながら複数の預貯金口座と保険の解約返戻金を保有していたので、これらについて自由財産拡張の申立てを行うことにより、すべて依頼者の財産として手元に残すことができました。
最終的に、依頼者の行為は浪費という免責不許可事由に該当するものの、破産手続きへの協力的な姿勢が破産管財人及び裁判所によって評価され、依頼者は裁量免責を得ることができました。
これによって、依頼者は約3000万円の借金の支払い義務を免れることができました。
3 所感(解決のポイント)
もし浪費などの免責不許可事由がある場合であっても、破産手続きに積極的に協力することにより、裁量により借金の免責を得られる場合があります。
もちろん全ての事案において裁量免責が認められるものではありませんが、裁量免責が認められる可能性があるのかどうか、慎重に見極めて適切な手続きを選択する必要があります。
今回の事案は個人再生も選択肢として考えられるところでしたが、依頼者の今後の人生を考えると、自己破産を選択し免責決定を得ることが最善であると思われる事案でした。
依頼者にとって最適の選択をし、最善の結果を得ることができたと考えております。