自己破産をすれば、原則として損害賠償・慰謝料の支払を免れることができます。
ただし、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償・慰謝料の支払義務は、破産法253条1項2号により、自己破産をしても免除されることはありません。
また、破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償・慰謝料の支払義務は、破産法253条1項3号により、自己破産をしても免除されることはありません。
破産法253条1項2号の「悪意」というのは、単なる「故意」ではなく、積極的な「害意」があることを意味します。
例えば、不倫・浮気による慰謝料であれば、単に不倫・浮気相手が既婚者であることを知りながら性的関係を持ったという「故意」があるだけならば、自己破産により免除されます。
しかし、被害者の配偶者を一方的に操り、被害者夫婦の平穏な家庭生活を積極的に破たんさせるというような積極的な「害意」まであれば、破産法253条1項2号により、自己破産をしても慰謝料の支払を免除されることはありません。
その他、他人の金品を盗んだり詐欺で騙し取ったりしたことによる損害賠償、会社の金銭を横領したことによる損害賠償、暴行・傷害を加えたことによる損害賠償・慰謝料、配偶者に対する暴力(DV)による損害賠償・慰謝料なども、破産法253条1項2号により、自己破産をしても免除されることはありません。
また、例えば、交通事故による損害賠償・慰謝料であれば、わき見運転のような単なる「過失」(不注意)による事故の場合には、自己破産をすれば免除されます。
しかし、飲酒運転、居眠り運転、無免許運転など、「重大な過失」による交通事故を起こし、被害者に怪我を負わせたり死亡させたりした場合には、破産法253条1項3号により、自己破産をしても損害賠償・慰謝料の支払を免除されることはありません。
なお、破産者が自動車保険に加入しているのであれば、故意による交通事故でなければ、重大な過失による交通事故の発生であっても、保険会社が破産者に代わって被害者への損害賠償を行うこととなります。